画像出典:https://www.sbbit.jp/article/cont1/116627
大手3キャリアが相次いで料金プランの値上げや改定を発表する中、楽天モバイルの三木谷浩史会長が「現段階で大きな値上げをする考えはない」と明言。仮想化技術やAI活用によるコスト削減効果を強調。
「価格競争力は維持する」
携帯電話料金の値上げの流れが止まらない中、楽天モバイル代表取締役会長の三木谷浩史氏が、他社とは異なる姿勢を鮮明にした。三木谷氏は5月14日に開催された楽天グループの2025年度第1四半期決算説明会で、「現段階で大きな値上げをする考えはない」と明言した。
大手3社の値上げ・新料金プラン発表が相次ぐ
この発言の背景には、大手3キャリアの相次ぐ料金プラン改定や値上げがある。
NTTドコモは4月に新料金プラン「ドコモ MAX」などを発表。無制限プランの「ドコモ MAX」は割引適用後でも3GB以上の利用で月額5,148円となり、これまでの「eximo」や「irumo」とは料金体系が大きく変更された。
KDDI(au)も新料金プラン「auバリューリンクプラン」を発表するとともに、既存の「使い放題MAX+」「スマホミニプラン」などの月額料金を最大330円値上げすることを決定。
さらにソフトバンクの宮川潤一社長も5月8日に「価格の見直しは必要なタイミング」と発言しており、近く料金改定を行う可能性が高まっている。
楽天の勝算はどこにある?
三木谷氏はなぜ、他社が値上げに動く中でも現行料金を維持できると考えているのだろうか。決算説明会では、以下の3つの要因を挙げた:
1. 先進技術によるコスト削減
「仮想化技術やO-RAN、AIの活用でオペレーティングコストをかなり抑えられている」と三木谷氏。楽天モバイルは当初から完全仮想化ネットワーク(フルバーチャルネットワーク)を採用しており、従来の通信事業者と比べて設備投資や運用コストを大幅に削減できる構造になっているという。
2. グループシナジーの活用
携帯事業単体ではなく、「楽天市場などほかの楽天サービスへの顧客誘導」によるメリットも大きいと三木谷氏は指摘。楽天エコシステム全体での収益を考えれば、通信事業単体での高い利益率は必ずしも必要ないという考えを示した。
3. 広告収入など新たな収益源
さらに「広告収入」なども収益源になっていると言及。スマートフォンは重要な広告媒体であり、ユーザー数を増やすことで広告収入の増加も見込めるため、低価格戦略との相乗効果があるという。
「付加価値サービス」で単価向上も視野に
一方で三木谷氏は、現行の「Rakuten最強プラン」(月額3,287円、データ容量無制限)の価格は維持しつつも、追加の「付加価値サービス」による単価向上も検討していることを明らかにした。
特に言及されたのは、楽天が出資する衛星通信「AST Space Mobile」の活用だ。山間部や離島など、通常の携帯電話の電波が届かない場所でも通信できるサービスとして、他社との差別化要因になり得るという。
ただし三木谷氏は「付加価値サービスは今後の検討事項」とも語っており、具体的なサービス内容や提供時期は明らかにしていない。
値上げしない楽天の戦略は成功するか?
大手3社が相次いで料金プランを改定・値上げする中、楽天モバイルが現行の低価格路線を維持する姿勢は、消費者にとって朗報と言える。
しかし、楽天モバイルはまだ通信事業単体では赤字を計上しており、株主からは収益性の向上を求める声も強い。コスト削減やグループシナジーだけで、本当に値上げなしでやっていけるのかは未知数だ。
また「大きな値上げはしない」という表現からは、小規模な調整の可能性は否定していないようにも読み取れる。値上げはしなくても、オプションサービスの拡充などで実質的な値上げとなる可能性もゼロではない。
筆者の見解:携帯料金競争の新フェーズへ
これまで楽天モバイルの参入により活性化した携帯電話の料金競争は、新たなフェーズに入ったと言えるだろう。大手3社は「価値」を追求する方向へと舵を切り、楽天は「価格」の優位性を維持する方針だ。
個人的には、この二極化は消費者にとって選択肢が増えるという意味ではプラスだと考える。「高くても付加価値の高いサービスが欲しい」ユーザーと「とにかく安く使いたい」ユーザー、両方のニーズに応えられる市場になりつつある。
今後は、楽天モバイルの「低価格路線の継続」と大手3社の「付加価値による差別化」という戦略の違いが、さらに明確になっていくだろう。消費者としては、自分のニーズに合った選択ができる良い時代になりつつあると言えるのではないだろうか。
ガジェットカフェ編集部