モトローラが久しぶりに日本の折りたたみスマホ市場に本格参入します。razr 60の135,800円という価格は、Galaxy Z Flip 6の約15万円と比べると若干安く、競争力はありそうです。ただし、いくつか気になる点があります。
まず、Snapdragon 7 Gen 1という選択が微妙です。2022年のミドルレンジチップを2025年のフラッグシップ価格帯の製品に搭載するのは、正直物足りません。競合のGalaxy Z Flip 6はSnapdragon 8 Gen 3を搭載していることを考えると、性能面で明らかに劣ります。
3.6インチのアウトディスプレイは実用的で良いですが、これも特別新しいものではありません。Galaxy Z Flip 6も3.4インチの外部ディスプレイを搭載しており、大きな差別化要因にはなりません。
「moto ai」機能、特に会議録音の自動要約「おまとめも」は興味深いですが、実際の精度がどの程度か懸念があります。日本語の会議内容を正確に要約するのは技術的に難しく、ビジネスで使うには信頼性の検証が必要です。誤った要約に基づいて意思決定するリスクもあります。
耐久性4倍向上とありますが、「従来比」というのがどのモデルと比較してなのか不明確です。チタンフレームは確かに強度面で優れていますが、折りたたみ部分のディスプレイの耐久性が本当の課題です。ここについての言及がないのが気になります。
IPX8防水は評価できますが、IP4Xという防塵性能は正直低すぎます。折りたたみ機構への埃の侵入は故障の大きな要因になりますから、ここはもっと改善が必要でした。
4,500mAhのバッテリー容量も、2つのディスプレイを駆動することを考えると十分とは言えません。特に外部ディスプレイを頻繁に使うなら、一日持たない可能性があります。
年末登場予定のrazr 60 Ultraは、スペック的にはより魅力的です。Snapdragon 8s Gen 3、4.0インチ外部ディスプレイ、165Hzリフレッシュレート、3眼カメラなど、こちらの方が2025年のフラッグシップにふさわしい仕様です。ただし、価格も相応に高くなるでしょう。
キャリア展開は評価できます。ドコモとソフトバンクでの取り扱いは、サポートや分割払いの面で安心感があります。ただし、モトローラブランドの日本での認知度がどこまであるか疑問です。
購入を検討する際の最大の懸念は、長期的なサポートです。モトローラの日本市場へのコミットメントがどこまで続くか、OSアップデートは何年提供されるか、修理サービスはどうなるか。これらが不透明な中で13万円を投資するのはリスクがあります。
個人的な見解として、razr 60は「試してみたい」人向けの製品です。折りたたみスマホの実用性を確かめたい、AI機能に興味がある、という人なら検討の価値があります。ただし、メイン機として長期使用を考えているなら、実績のあるGalaxy Z Flipシリーズの方が無難でしょう。
結論として、razr 60は折りたたみスマホ市場に新しい選択肢をもたらす意義はありますが、製品としての完成度はまだ改善の余地があります。特にプロセッサの選択は残念で、この価格帯ならもっと高性能なチップを期待したいところです。年末のUltraモデルを待つか、価格が下がるのを待つのが賢明かもしれません。