2027年に登場するというiPhone 20周年記念モデルの話は、正直なところまだ気が早い感じがします。2年先の話ですから、技術仕様も大きく変わる可能性があります。ただ、COE（Color Filter on Encapsulation）技術自体は興味深い進化です。
偏光フィルムを撤廃して明るさと薄さを両立させるという発想は理にかなっています。現在の有機ELディスプレイは、偏光フィルムが光の約50%を吸収してしまうため、バックライトの出力を上げざるを得ず、結果的に電力消費が増えています。これを解決できれば、確かに画期的です。
ただし、偏光フィルムには反射を抑える重要な役割があります。これなしで同等の視認性を確保するのは技術的に相当難しいはずです。高度なコーティング技術で対応するとしても、コストと耐久性の問題が出てくるでしょう。屋外での使用、特に直射日光下での視認性は大きな課題になりそうです。
4辺曲面の完全ベゼルレスデザインについては、見た目は確かに未来的で魅力的ですが、実用性には疑問符がつきます。誤タッチの問題、保護フィルムやケースの装着困難、修理コストの増大など、デメリットも多いです。Samsungが一時期推進した曲面ディスプレイも、最近はフラットに回帰していることを考えると、Appleがどこまで曲面にこだわるか疑問です。
2026年の折りたたみiPhone登場という話も含めて考えると、Appleは相当野心的な製品計画を立てているようです。ただ、Appleの過去の行動パターンを見ると、新技術の採用には極めて慎重です。折りたたみスマホも、SamsungやHuaweiが先行して問題点を洗い出した後に、より完成度の高い製品を出すのがAppleらしいやり方です。
COE技術の量産化も大きな課題です。iPhoneは年間2億台以上生産される製品ですから、歩留まりが少しでも悪いと大問題になります。Samsungが技術開発をリードしているとはいえ、Appleが求める品質基準をクリアできるかは別問題です。
20周年という節目に革新的な製品を出したい気持ちは分かりますが、記念モデルだからといって実験的すぎる技術を投入するのはリスクが高いです。iPhone Xのような成功例もありますが、あれはFace IDや有機ELなど、既に実証済みの技術を組み合わせたものでした。
競合他社への影響という点では、もしCOE技術が成功すれば、確かに業界標準が変わる可能性があります。ただ、それは「もし成功すれば」の話です。技術的なブレークスルーがあるかもしれませんし、別の方向に進化する可能性もあります。
個人的には、2027年のiPhoneがどうなるかより、直近の製品がどう進化するかの方が重要だと思います。COE技術は確かに興味深いですが、まだ実証されていない技術に過度な期待を寄せるのは危険です。
結論として、COE技術は理論的には素晴らしい進化ですが、実用化にはまだ多くのハードルがあります。2027年という時間があれば技術的課題を解決できる可能性はありますが、現時点では「期待はするが、実現は未知数」というのが現実的な見方でしょう。
Appleの20年間の歴史を振り返ると、確かに節目の年には革新的な製品を出してきました。2027年も何か特別なものを用意してくるでしょう。ただし、それがCOE技術なのか、全く別の革新なのかは、もう少し時間が経たないと分からないというのが正直なところです。